導入事例
弁護士法人 賢誠総合法律事務所 様
GeminiとGoogle Workspaceで実現する、AI時代の「フロントランナー」としての弁護士業務改革
弁護士法人 賢誠総合法律事務所 様
(左から)吉積情報株式会社 セールスマーケティング部 / 赤嶺 一行、賢誠総合法律事務所 事務局 / 山川 智美様、弁護士 / 国府 拓矢様、弁護士 / 黒栁 武史様
- 業種
- 専門職(コンサルタント・士業・金融・不動産)
- サービス
- Google Workspace、Google Workspace with Gemini
- 企業規模
- 11-99名
弁護士法人 賢誠総合法律事務所は、交通事故、相続、企業法務など幅広い分野で高い専門性を発揮している法律事務所です。
同事務所では、「AI活用のフロントランナー」を目指し、Microsoft365とDropboxを利用していた環境から、Geminiを中核としたGoogle Workspaceへと全社的な移行を決断されました。
今回は、システム選定と導入を主導された弁護士の黒栁 武史様と、事務局長の山川 智美様に、導入の経緯とその効果についてお話を伺いました。
2025年12月掲載
セキュリティを最優先しつつ、実務で使えるAIを求めて
― Google Workspace導入以前の課題と、検討のきっかけを教えてください
賢誠総合法律事務所 弁護士 黒栁 武史様
黒栁様:導入の最大の動機は「AI活用」です。弁護士業界においても生成AIの活用は避けて通れないテーマですが、セキュリティ上の懸念から保守的な事務所が多いのが現状です。しかし当事務所では、セキュリティを最優先にしつつも、先進的にAIを取り入れて業務効率化を図りたいという強い思いがありました。
その中で、昨年からMicrosoftのCopilotを試験導入していましたが、当時の性能では我々が求める法務業務のレベル、特に多くのコンテキスト(文脈)を読み込ませる作業においては十分とは言えませんでした。セキュリティを最優先にしつつ、実用的なAI活用を実現するには、MicrosoftかGoogle Workspaceか。その二択の中で、Geminiの「扱える情報量の多さ(トークン数)」と精度の高さが決め手となりました。
また、業務環境の課題としては「情報のサイロ化」と「コスト・管理」の問題がありました。 以前はMicrosoft365とDropboxを併用していたのですが、ツールが分かれていることで情報が散在し、管理も煩雑になっていたのです。ここにさらにAIツールを導入するとなると、コストも跳ね上がります。そこで、Google Workspaceに一本化することで、コストを抑えつつ、組織全体の情報を「AIが使える資源」に変えたいと考えたのです。
Geminiの圧倒的な処理能力と「学習に使われない」安心感
― 数ある選択肢の中で、Google Workspaceを選ばれた理由は何でしたか

黒栁様:一番の決め手は、やはりAI、具体的にはGeminiとNotebookLMなどの性能に加え、それらの利用に関して、セキュリティ面での安全性が担保されていたことです。 Google以外の生成AIの規約なども色々と調査する中で、特に法人契約のGoogle Workspace上であれば、入力したデータがAIの学習に使われないこと、そしてクラウド事業者側もデータを閲覧しないことなどが規約で明記されていため、安心して導入を決めることができました。
― その後、事務職員の皆様も含めた「全社導入」へ踏み切った背景には何があったのでしょうか
黒栁様: 最初は、今年の4月頃から弁護士だけの先行導入を実施しました。しかし、使っていくうちに「これは事務所全体の基盤にすべきだ」と判断しました。 理由の一つはコストと効率のバランスです。これまでのようにMicrosoft 365とDropboxを契約し、さらにAIツールも...となるとコストが嵩みます 。Google Workspaceなら、メールもカレンダーもドライブもAIも全部活用できるためコストを抑えることができる。また、AIという強い武器を、全職員が、ワークフロー全般でシームレスに利用できるメリットは大きかったですね 。
さらに、全社導入を機にGoogle Workspaceの法人アカウントに一本化することで、セキュリティとガバナンスを徹底できる体制を整えることができました。
ひな形のない書面起案も、AIとなら10~15分で完結。作業時間を10分の1に圧縮

― 実際に導入されて、弁護士業務にはどのような効果がありましたか
黒栁様:例えば、契約書の作成業務の効率化が挙げられます。 これまではひな形のない契約書を一から作成する場合、どうしても2~3時間はかかっていました。しかし現在は、必要な素材や要素を踏まえて、Geminiに指示(プロンプト入力)するだけで、かなり精度の高いたたき台が作成されます。プロンプト入力の時間を含めても10~15分程度で完了するので、作業時間は約10分の1にまで短縮できました。
契約書以外にも、判例のリサーチや事案分析、会議の議事録作成など、あらゆる業務でAIを活用しています。特にGeminiは、PDFやテキストデータはもちろん、音声や動画ファイルも含めて読み込める情報量(トークン数)が圧倒的に多いので、大量の資料を読み込ませて要約させたり、論点を整理させたりする作業には非常に適していると思います。
私のスタンスとしては、「渡せる仕事はすべてAIに渡す」ようにしています 。もちろんAIはハルシネーションを起こす可能性があるため、弁護士によるレビューは必須です。しかし、「ゼロから人間が作業する」のと「AIが作ったたたき台を人間が修正・判断する」のでは、労力もスピードも段違いですから。
また、事務局へ業務を依頼する際も、これまではしてほしい作業を指示をするだけでしたが、今はスプレッドシート上で「Geminiにこのプロンプトを入力して、この処理をさせてください」と、AIの活用方法もセットで指示するようにしています。これにより、私だけでなく事務所全体で業務プロセスそのものが「AI前提」に変わりつつあるな、と感じています。これからは事務所全体で有用なプロンプトやGemを共有し、効率的に活用する仕組みをつくるなど、より組織全体で積極的にAIを活用していきたいと思っています。
「独自Gemの活用」で、経験に依存しない正確な報告業務を実現
賢誠総合法律事務所 事務局 山川 智美様
― 事務局の皆様の業務にはどのような変化がありましたか
山川 様:事務局の業務でも、生産性が格段に上がったと感じています。 例えば、電話の内容などをメモにまとめて弁護士に共有する際、これまでは担当者の経験値によって情報の粒度や正確性に差が出ていました。Google Workspaceを導入してからは、独自のGemを作成・活用することで、新人スタッフでもベテランと同じ精度で要点をまとめられるようになり、業務品質が均質化されました。
例えば、「すぐに電話が欲しい」のか「できるだけ早く電話が欲しい」のかといった緊急度の微妙なニュアンスや、専門用語が混じる指示などは、経験の浅いスタッフには判断が難しい場面です。しかしGemを活用し始めてからは、AIが的確に会話の内容を整理・要約してくれるため、自分の解釈を挟まずに事実を正確に伝えられるようになりました。たとえ専門用語の意味を完全に理解できていなくても、AIがまとめた内容をそのまま共有すれば弁護士には正確に伝わるため、スタッフの心理的な負担も減り、誰でも高い品質で業務ができるようになっています。
また、マニュアル化・ルール化できる定型業務はすべてAI(Gemini)に任せることで、スタッフがより付加価値の高い業務に集中できるようになり、事務局の働き方そのものが変わると期待しています。さらに今後は、これまでは属人化していた様々なノウハウもGoogleサイトなども活用することで、誰でも簡単に検索して解決できるようにして、組織全体の底上げに繋げていけると考えています。
専門エンジニア不在でも安心。やりたいことを実現する最適な機能を提案してくれた

― 吉積情報のサポートはいかがでしたか
黒栁様:吉積情報さんには、Google Workspaceの基本的な仕組みの解説から伴走していただきました。特に助かったのは、こちらの「やりたいこと」に対して、Google Workspaceの仕様に合わせた最適な提案をしてくれた点ですね。 例えば、Outlookで利用していた事務所の代表窓口(info@~)のようなメールアドレスを、Google Workspace側で作る際、最初は「新しくユーザーアカウントを契約しないといけない」と思っていたんです。でも吉積情報さんに相談したら、「それなら『グループメール』機能を使えば、追加コスト無しで複数人で管理できますよ」と教えてくださって。また、アカウントを作成する場合と、グループメールで対応する場合の差異についても細かく教えていただきました。その他、Zendeskを通じた問い合わせ対応では、「そんな細かいことまで?」というようなマニアックな質問にも即座に、かつ的確に答えてくれるので、本当に助かっています。専門家がいない中でも自信を持って移行を進められたのは、吉積情報さんの手厚いサポートがあったからこそですね。
もともと、吉積情報さんを選定させていただいたきっかけは、Web検索でした。「Google Workspace 導入」などで検索すると、吉積情報さんの記事が上位によく出てきて、記事の内容も非常に分かりやすかったんです。「ここなら信頼できる」と直感があったため、他の代理店には問い合わせずに決めました。
過去のナレッジを未来への「資源」に変え、業界の「フロントランナー」へ

― 今後の展望をお聞かせください
黒栁様:直近の目標は、まず、AIをフル活用するために、Microsoft体系からGoogle体系へと、業務環境やデータを速やかに移行することです。同時に、現在DropboxにあるデータをすべてGoogleドライブに移行し、GoogleのDeep Researchなどを活用して、事務所内の全ナレッジをもとにAIを活用できるようにすることですね。 これまでは「あの資料どこだっけ?」と記憶を頼りに探したり、人に聞いたりしていたことが、AIに聞けば一発で解決するようになります。さらにAI活用が進めば、過去の膨大なナレッジが、ただの「保管物」から、いつでも引き出して活用できる組織全体の「資産」に変わる。これには非常に大きな期待を寄せています。
また、Google Cloud(Vertex AI)を使った独自のアプリケーション開発を進めたりもしています。例えば、Geminiが対応していなかった形式の音声データを文字起こしするツールなんかを内製してみたりして。今後はGoogle Workspace Flows(現Google Workspace Studio)やGAS(Google Apps Script)も活用して、単純作業は積極的に自動化し、弁護士は交渉や法廷技術といった「人間にしかできないこと」に全リソースを注ぎ込めるようにしたいですね。
いまは弁護士業界においても変化の激しい時代ですが、AIとクラウドを使いこなし、業務効率化とリーガルサービスの質を両立させる「フロントランナー」でありたい。誰もやっていないことにこそ、率先して挑戦していきたいと考えています。
本当は教えたくないほど強力なツール。だからこそプロの支援で使いこなしてほしい
賢誠総合法律事務所 事務局 / 山川 智美様、弁護士 / 国府 拓矢様、弁護士 / 黒栁 武史様
― Google Workspaceの導入やGeminiの活用を検討している企業へのメッセージをお願いします
黒栁様:法務業務の効率化にAIの力を借りるというのは、もう業界全体として避けて通れない、必要な流れだと感じています。その中での選択肢として、Google Workspaceは非常に有力ですね。Geminiが統合されてからは使用感が劇的に変わりましたし、Googleの検索機能やFlowsなどが次々と統合されていくスピード感を見ていると、正直、競合他社はなかなか対抗できないんじゃないかとすら思います。
ただ、実際に導入するとなると、セキュリティの設定や既存環境からの移行など、専門的な知識が必要な部分も多いです。そこはやはり、我々のようにプロフェッショナルなサポートを受けることを強くお勧めしますね。
本音を言うと、あまり他の事務所には勧めたくないくらいなんですけどね(笑)。それくらい、今のGoogle Workspaceは強力なツールになっていると思います。
2025年12月記事作成(取材・文/吉積情報)
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