その1:社内外でセキュアに動画をやり取りすることが可能
稲川氏と峯松氏は、Cmosyの特徴を5つ挙げた。1つ目の特徴は、社内外でセキュアに動画のやり取りが可能なことだ。
TBSテレビでは長年にわたり、制作担当者がさまざまなタイミングで映像を複製したDVDを何人にも関係者に配布して、オンエア素材のプレビューのチェックを行ってきた。しかし、その手間のかかるやり取りに頭を悩ませていたという。
稲川氏:大容量ファイルのやり取りは、無料で大容量ファイル転送ができるオンラインストレージを使う人がいました。しかし、使い勝手が悪かったり、承認されないWebサービスを利用するシャドーITなどのセキュリティ上のリスクも問題となっていました。 本来ならば、プレビューのチェックに関係者が編集室に全員集まれればいいのですが、多忙で無理な場合はADがハードディスクやDVDに焼いて走って渡しに行っていました。今どきYouTubeなど普通にオンライン動画試聴が一般的なのに、なぜプレビューのためにDVDを何十枚も焼いて配らなければいけないのか?クラウド上にファイルを置いて、動画ファイルをプレビューしてチェックしてもらう仕組みはできないのか?不思議で仕方がありませんでした。DVDを何十枚と焼いて配ることによる情報漏えいの可能性も問題となっていました。
このような課題解決のために、TBSテレビではクラウドを利用して簡単に動画プレビューできる開発プロジェクトを開始。TBSテレビと吉積情報の共同開発によるファイル共有システム「Cmosy」を開発し、安全に社外とプレビューやファイルの受け渡しを実現している。例えば、外部の協力会社のスタッフとのファイルを安全にやり取りするために、G Suite のIDとCmosyが必要。2段階の鍵付セキュリティになっている。
また、放送業界の場合は、「社内に共有したい」「グループ会社と共有したい」「スポットでたまにしかやらない人と共有したい」「一回だけ見せたい」という多数の共有機能が必要になる。しかし、 Googleドライブ だけでもアップロードしたものを共有できるが、共有する方法の種類は微妙に少ない。外部に対しても、全員同じ権限で共有することは、あまり望ましくないだろう。
Cmosyには、大容量ファイルを渡す「ファイル便」、更新権も与える「共有便」、閲覧権限を付与したものだけ観られる「公開便」のサービスがあり、他のWebサービスを使う必要をなくしている。また、そのファイル便や共有便、公開便で微妙に共有権限が異なっており、相手に応じて共有方法を変更することができる。例えば、ユーザ・グループ単位で編集者、閲覧者権限を設定することも可能だという。

峯松氏:収録した.MOVなど動画ファイルのやり取りは「ファイル便」です。クラウド上に上げて、相手はダウンロードして編集をする際に使われます。また、オンエアの完パケなどのお届けにも使われます。Gmailの認証の強制や有効期限設定、DL回数制限などを設けることが可能です。
ファイル便は、大容量ファイルを送ることが可能で、数十GBを超えるような動画ファイルを誰かに送りたい場合や納品した場合に使います。例えば、最近では海外に番組を販売することがありまして、これまでは国際宅配便でハードディスクを郵送してファイルを届けていました。しかし、衝撃による故障の心配やハードディスクの返却も面倒でした。ファイル便は、そのような問題を解決することができます。
「仕事便」には、サンプルみたいな透かしを設定できるウォーターマーク機能がありまして、海外に番組を販売する際には、再販できないように加工してお送りすることもできます。
稲川氏:Cmosyの中でも、台本などの共有などで高い頻度で使われているのが「共有便」です。作った台本をチェックして、コメントを入れたり直すこともできます。共有便は、Gmailユーザーとの外部共有が可能で、編集したい時に招待して、一緒に編集することが可能です。共有する際に、有効期限設定が可能です。
「公開便」は、わざわざダウンロードしなくてもブラウザ上でプレビューできる機能です。有効期限設定やパスワード設定機能がありまして、いろんな人と安全に共有することができます。公開便はさまざまな端末で観られるのもメリットです。OSや端末を選ばずにWindowsやMac、スマホ、タブレットでもプレビューすることができますので、外出先でも確認が可能です。
チェックしたものはオンエアの後は見ることはありませんので、共有期限はだいたい2~3日に設定します。期限で自動的に消えることにより、後から別の用途で使われたりするリスクを防ぐことができます。