導入事例
ダイヤ工業株式会社
眠っていたデータが「資産」として輝き出す。ダイヤ工業がGoogle Workspaceで築いた、AIが業務に溶け込む「共生」の土台
ダイヤ工業株式会社 様
(左から)吉積情報株式会社 ビジネスソリューション部 スペシャリスト 丸山、吉積情報株式会社 ビジネスソリューション部 サブリーダー 武部、ダイヤ工業株式会社 IT部門 Leader 藤井様
- 業種
- 製造業
- サービス
- Google Workspace with Gemini
- 企業規模
- 100-999名
ダイヤ工業株式会社は、サポーターやコルセットを中心とした医療用品の開発・製造を手がけるメーカーです。職人の技術とデータに基づいた製品開発で業界から高い評価を得ている同社は、2025年12月、長年使い続けたMicrosoft 365やオンプレミス環境からGoogle Workspace Enterprise Standardへの移行を完了しました。
このプロジェクトの核心は単なるツールのリプレイスではなく、代表の松尾様が掲げた「全社員がAIを使いこなす環境づくり」にあります。AI専任担当の藤井様が、いかにして経営層を説得し、現場の「情報のサイロ化」を解消してデータを資産へと変えていったのか。そのプロセスを伺いました。
代表の号令から始まった「全社員へのAI普及」と、消えゆくデータの「資産化」への挑戦

ダイヤ工業株式会社 IT部門 Leader 藤井様
― 今回、全社的なAI導入とGoogle Workspaceへの移行を決断された背景を教えてください。
藤井様: 2025年4月にAI専任担当として配属された際、代表の松尾から「一部の人間が特化して使うのではなく、全社員が広く浅くでも、実務でAIを活用できる環境を作りたい。今の時代に乗り遅れたくない」という指示がありました。
当時、私は個人的に「Google One AI Premium」でGeminiを利用しており、回答の速さやGoogleの各種ツールとの連携のしやすさを実感していたのもあり、全社員に展開するにあたってはコスト面や管理のしやすさ、そして「プロンプトさえ用意すれば誰でも環境を構築できる」という汎用性を評価し、Google Workspaceへの移行を提案しました。
― 以前の環境では、具体的にどのような「課題」があったのでしょうか?
藤井様: 最も大きな課題は、データの検索性とストレージの限界でした。以前はオンプレミスのファイルサーバーを使用していましたが、検索機能が十分ではなく、目的のファイルを探すために深い階層のフォルダを一つずつ開いていく作業に多大な時間を費やしていたのです。
また、サーバー容量が常に不足しており、「新しいデータを保存するために、過去の不要なデータを削除してください」と全社に周知して回るような状況でした。せっかく蓄積したデータが活用されず、保存場所の確保のために捨てられてしまうという状況は、企業にとって大きな損失だと感じていましたね。さらに、社外との大容量ファイルのやり取りには無料のファイル送信サービスを都度利用しており、手間もセキュリティ上の懸念もありました。
投資会議の承認を後押ししたROIの可視化と、利便性を支える「守り」の設計

― 投資会議を突破するために、どのような準備をされましたか?
藤井様: 弊社の経営層はROI(投資対効果)を非常に重要視します。実は、以前にも一度 Google Workspaceの導入を検討した時期があったんです。その時はROIの部分であまりプラスが見えてこなかったため見送りとなったのですが、今回はGeminiが標準搭載されたことで費用感的にもプラスになると判断され、前向きな検討に至りました。
この判断を確実なものにするため、吉積情報さんには「Google Workspaceを導入することで何が実現でき、どのようなメリットがあるのか」を弊社の実務に落とし込んだかたちで、資料作成やミーティングを通じて説明していただきました。
具体的には、Google Workspaceの導入によって削減できる時間を算出し、それをコストに換算して投資の正当性を可視化しました。その後、実際にGeminiを活用しながら「どういうアプローチであれば幹部陣にその価値が伝わるか」を吉積情報さんと共に検討し、合意形成を進めていったのです。この「弊社の状況に合わせた徹底的な伴走」があったからこそ、承認を得られたのだと感じています。
― 最終的にセキュリティ機能が充実した「Enterprise Standard」を選択されましたが、選定にあたって重視された要件は何だったのでしょうか。
藤井様: 最も重視したのは、「これまで実施してきたデバイス制御を、新しい環境でも確実に継続できるか」という点です。長年維持してきた管理体制を後退させたくないという思いがあり、コンテキストアウェアアクセス(アクセス制御)などの高度な管理機能を持つEnterprise Standardが、弊社の要件に合致していると判断しました。
― セキュリティ環境が大きく変わることへの不安はありませんでしたか?
藤井様: どのプランを選んだとしても、Google Workspaceであればセキュリティが守られない環境になることはないと理解していました。ですから、プラットフォーム全体に対する不安は全くありませんでしたね。
まずは現状のセキュリティレベルを維持し、その上でAIなどの新機能をいかに安全に活用していくか。その土台をしっかり固められるプランとして、迷いなく選択することができました。
「AIという相棒」を提示し、現場の不安を払拭。Gemini活用率70%超を支えた意識改革

― 長年Microsoft 365に慣れ親しんだ従業員の皆様から、移行に対する不安の声はありましたか?
藤井様: 正直に言うと、今でもあります(笑)。6年ほどMicrosoft 365を利用していたので、スプレッドシートやドキュメントに変わることで「今までできていたことができなくなるのでは」という不安の声が上がっていました。反応としてはポジティブとネガティブが半々といったところでしょうか。説明すれば喜んで使ってくれる人もいれば、以前のUIの方が良かったと感じる人もいます。ただ、業務に必要な機能はしっかりとGoogleのサービスへ置き換えられていますし、運用において大きな問題にはなっていない感覚です。
― そうした懸念に対し、どのような働きかけをされたのでしょうか。
藤井様: 単なるツールの置き換えではなく、「AIという新しい相棒が手に入ること」をセットで伝え続けました。「スプレッドシートでAI関数が使えるようになる」「Geminiに分析を頼めるようになる」といった、Google Workspaceだからこそできる「プラスアルファの価値」を提示したんです。
具体的には、全12回のワークショップを開催し、Geminiを使って日報の要約やメール作成を行う実演を行いました。
実際に使い始めると、特にGoogle ドライブの検索精度が高い評価を得ています。ファイル名だけでなく、資料内や画像内のテキストまで検索対象になるため、探し物の時間が劇的に減りました。また、共有ドライブの活用により、これまでのように外部サービスを使わずとも安全かつスムーズにファイル共有ができるようになった点も大きな変化です。
― こうした働きかけの結果、社内でのGemini浸透具合はいかがでしょうか?
藤井様: Geminiの社内活用率は、すでに70%を超えています。弊社は縫製など現場で働く社員も多いのですが、その中でのこの数字は非常に高い手応えを感じています。今期中には85%まで引き上げたいという目標があり、継続的にアップデート情報の配信や、活用事例の共有を行っています。
埋もれていた知見をNotebookLMで資産化。若手社員の成長と「自律的な改善」を促すAI活用

― 蓄積されたデータが「資産」として活用され始めたというエピソードを教えてください。
藤井様: 特に効果を実感しているのが、NotebookLMを活用したナレッジの蓄積とチャットボット化です。これまでオンプレミスサーバーやMicrosoft 365のフォルダの奥底で眠っていた、過去2年分の投資会議資料や社内規定をすべてNotebookLMに読み込ませました。
これにより、若手社員が「このプロジェクトの背景は?」「この手続きのルールは?」といった疑問を、上司の手を止めずともAIに質問して自己解決できる環境が整いました。かつては活用しきれず埋もれていた大量のデータが、今はAIを通じて新入社員の教育や判断を支える「生きた資産」として輝き出しています。
― Geminiが教育やナレッジ継承の役割も担っているのですね。
藤井様: その通りです。例えば弊社には、一定額以上の経費が発生する企画は投資会議にかけるというルールがありますが、NotebookLMに過去の成功事例を学習させたことで、若手社員が「過去にどのような基準で判断されたか」をAIに相談しながら、自ら納得感のある企画書を作成できるようになりました。
私たちが目指しているのは、単にAIに頼り切ることではありません。AIを活用して、過去の知見を若手社員の判断材料や成長を促すナレッジへと昇華させ、「自分で考え、起案できる人材」を育てる。そんなチャレンジができる環境を作れたことこそが、今回の大きな意義だと感じています。
― その他、独自のシステム連携などの効果はありましたか?
藤井様: Googleアカウント(IAP等)を利用し、自社の日報システムへのアクセス制限を再構築しました。これにより、以前は社内PCからしか閲覧できなかった日報が、外出先からスマホで安全に確認できるようになりました。
また、Geminiと相談しながらGAS(Google Apps Script)で自分専用の業務ツールを自作する非IT部門の社員も現れています。こうした「自律的な改善」が各所で生まれ始めているのは、Google Workspace導入による大きな副次的効果だと感じています。
迅速なサポートを糧に、試行錯誤を経て手にした
『自走できる体制』

― 12月からの本格導入では、メールの並行運用やセキュリティ設計など、技術的な難所も多かったと伺っています。
藤井様: はい。特に既存のオンプレミスメール(Post Office)環境との並行運用や二重配信設定は、非常に複雑な検討が必要でした。この部分はIT部門長の平岡が担当し、丸山さんをはじめとした吉積情報のエンジニアの皆さんと連携しながら進めました。
私自身はGmailの詳細設定やモバイルデバイス管理を担当したのですが、不慣れな中でわからないことが出てくるたびに、チャットで即座に質問したり、スポットでMTGを依頼したりしました。これに対して、吉積情報さんは常に迅速にレスポンスを返してくれたので、滞りなく作業を進めることができ、非常に助かりました。
― 支援を通じて、社内の体制に変化はありましたか?
藤井様: 吉積情報さんには個別MTGなどのサポート枠を用意していただいていたのですが、実は自分たちで解決しようと頑張りすぎてしまい、あまり活用しきれなかったんです(笑)。今思えば「もっと頼ればよかった」というもったいなさはあります。
ただ、こうして自分たちで試行錯誤したプロセスがあったからこそ、最終的には自分たちの手で運用を回せる「自走できる体制」が自然と構築されました。
AIを共に考える「パートナー」へ。成功体験の積み重ねが導く、全社的な意識改革

― 今後の展望と、導入を検討されている企業様へのアドバイスをお願いします。
藤井様: Google Workspaceを導入したことで、業務のあらゆる場面でAIが自然に顔を出してくれるようになりました。何かあれば「まずGeminiに聞いてみよう」「AIで試してみよう」といった空気が社内に醸成されているのは、非常に大きな変化です。これが、よりクリエイティブな仕事に取り組むための確かな土台になっていると感じています。
今期からはAI担当も3名に増員されました。今後はAIを活用した在庫予測や販売・生産計画の高度化など、さらに踏み込んだデータ活用に挑戦するつもりです 。この活用の流れを加速させ、AIを単なる「道具」ではなく、共に考える「パートナー」へと昇華させていきたいと考えています 。
検討中の企業様に伝えたいのは、「まずは小さな成功事例を一つ作ってみること」です。完璧な計画を立てるよりも、まずは環境を変えてみて、誰か一人が「便利になった」と実感する。その成功体験を共有し、積み重ねていくことが、全社的な意識改革につながると確信しています。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました。
2026年5月記事作成(取材・文/吉積情報)
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