基盤となるインフラとAIモデルの進化

基調講演の冒頭、Google Cloud 日本代表の平手 智行氏は、Google Cloudのインフラが世界42のリージョンに広がり、新サービス「Cloud WAN」によりネットワークのパフォーマンスとコスト効率が大幅に向上したことを報告しました。続いて、Google Cloudのサワラブ・ティワリ氏が、AIモデルの進化について以下のように語りました。
Gemini 2.5 Flashが東京リージョンに対応

速度とコスト効率に優れた「Gemini 2.5 Flash」が東京リージョンで利用可能になり、日本国内で全てのデータ処理を完結させながら、高速な応答が求められるタスクにも対応できるようになりました。
多彩な生成メディアモデル
Vertex AI上で、複雑なプロンプトから高品質な動画を生成する「Veo 3」、リアルで感情豊かな音声を実現する「Chirp 3」、テキストから音楽を生成する「Lyria 2」などが利用可能になり、コンテンツ制作のあり方を変革します。
オンプレミスでもGeminiを利用可能に
Google Distributed Cloud (GDC) 上でGeminiが利用可能になり、機密性の高いデータを保持したまま、厳格なデータ主権や規制が求められる環境でも生成AIのワークロードを実行できるようになります。
「Google Agentspace」登場 – マルチエージェント時代の幕開け

本講演の最大の発表の一つが、新サービス「Google Agentspace」の一般公開です。
すべてのユーザーに即時公開され、日本リージョンにも対応しています!これは、企業のナレッジワーカーが情報収集、分析、意思決定を行うのを支援するプラットフォームです。
このAgentspaceを支える技術として、マルチエージェントシステムの構築を容易にするオープンソースフレームワーク「Agent Development Kit」と、エージェント間の対話・連携を標準化するオープンプロトコル「Agent2Agent Protocol」も紹介されました。
関連動画:https://www.youtube.com/watch?v=rsOO4Nmf3vM
Google Cloud Next Tokyo 25で紹介されたGoogle Agentspaceの機能
Google Cloud Next Tokyo 25では、保守マネージャーが「緊急性の高い案件を抽出して」と指示するだけで、複数の専門エージェントが自律的に連携する様子をデモにより披露されました。
具体的には、
- 「問い合わせデータ処理エージェント」が顧客の声を要約
- 「故障予測エージェント」がIoTデータを分析
- 「緊急度スコア付けエージェント」が優先順位を判断
- 「担当者マッチング」と「タスクアサイン」エージェントが最適な担当者へ通知
というように、簡単な指示を出すだけで完遂させることができました。
これにより、従来は担当者間のコミュニケーション、手作業での情報入力や判断が必要であり、多くの時間と労力を費やしていた業務が、一度の指示で完結するようになりました。
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産業界に広がるAI活用のフロンティア
博報堂の名倉氏は、広告の枠を超えた「生活者価値デザイン・カンパニー」への変革を目指し、AIの積極的な導入と利活用を推進しています。同社はAIを単なる正解を出すツールではなく、「人間の創造性を拡張するパートナー」と位置づけ、AIとの対話から気づきと創造性を生み出す「Human-Centered AI」を提唱しています。この方針に基づき、コンセプト特化型生成AI「STRATEGY BLOOM?」の導入や、「パートナー主義の徹底」によるサービス領域拡大、AIとの協働による「ニュースタンダード」の確立を進めています。
社内におけるAIの導入・利活用を促進するため、役員自らがAIを学び発信する「AI逆メンター制度」を導入し、トライアルプロジェクトでは、プロジェクト実施前と比較してアクティブユーザー率6倍、プロジェクト後の継続利用意向90%以上と高い成果を上げています。また、ナレッジツール「NotebookLM」を活用した独自のナレッジ共有スペースを構築し、働き方改革とナレッジの拡大を推進しています。
顧客と社会への貢献として、AI利活用支援コンサルティング(CoE)で現状把握から自立運用までをサポート。さらに、データ、アイデア創出、ペルソナ設定、エージェント活用を含む「マーケティング業務BPR支援プログラム」を提供し、IT・システムレイヤーを含む全レイヤーで支援することで、With AIでの顧客貢献を目指しています。

- メルカリ:次世代の顧客サポート
メルカリ執行役員CTOの木村 俊也氏は、AIやクラウド技術をあらゆる事業の基盤と位置づけ、「AIでもっと使いやすく、もっと安心に、もっと効率的に」をテーマに、「Customer Engagement Suite with Google AI」を導入し、AIを活用したカスタマーサポートを強化。顧客対応の多言語化、効率化、品質向上を実現し、「世界の問い合わせに一拠点で対応」できる体制を目指しています。
- 出前館:検索体験の向上とビジネス成果
出前館はVertex AI Searchを導入し、検索エンジンを強化しました。これにより、検索精度とコンバージョン率を向上させ、カスタマーエージェントはマルチモーダル情報の統合・推論、自然な音声対話、アプリ連携・操作代行、テキストと画像の組み合わせ処理が可能です。
- MIXI:マーケティングコンテンツ生成
AIを「最高のコミュニケーションサービス」実現の核と捉え、創造性向上と業務効率化のためAgentspaceを活用し、AIスキル向上とプラットフォーム構築を進め、「AIでもっと楽しく、もっと革新的なサービス」を提供する展望を示しています。
生成AIの利用を保護する著作権補償
基調講演では、顧客が安心して生成AIを活用できるよう、Googleの包括的な補償プログラムについても言及されました。 このプログラムは二つの柱で構成されています。
①Googleがモデルのトレーニングに使用したデータに関する「トレーニングデータ補償」
➁ユーザーがAIを利用して生成したコンテンツが第三者の著作権を侵害したと訴えられた場合に保護する「生成出力補償」
Googleは、トレーニングデータから生成結果までを幅広くカバーすることで 、企業が法的な懸念なく自信をもってAI導入を進められる環境を提供すると述べました。
まとめ:すべての企業がAIの価値を実現する時代へ
基調講演の最後、平手氏は、Google Cloudがインフラ、データプラットフォーム、モデル、そしてAIエージェントの実行環境までをフルスタックで提供すること 、そして強力なパートナーエコシステムと共に顧客の価値実現を加速させることを改めて強調しました 。
「AIエージェント元年」は、AIが単なる分析ツールや効率化ツールから、ビジネスの現場で自律的に価値を生み出すパートナーへと進化する時代の到来を告げるものでした。その変革をあらゆる企業が享受できるよう、最新かつお役立ち情報をこれからもお届けしていきます!
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