そもそも「クライアントサイド暗号化(CSE)」とは?
まず、クライアントサイド暗号化(CSE)について簡単に説明していきます。
通常のクラウドサービスでは、データはサービス提供者のサーバー上で暗号化されます。これも安全な方法ですが、サービス提供者(この場合はGoogle)は理論上、データにアクセスできる鍵を持っています。
一方、CSEは ユーザー自身が管理する暗号鍵 を使用して、データがGoogleのサーバーに送信される「前」に、お使いのPC(クライアントサイド)で暗号化する仕組みです。具体的には、米国の政府標準でもある AES-256 という堅牢な暗号化方式が採用されており、第三者による解読は極めて困難です。
これにより、Googleを含む外部の誰もがファイルの内容を解読できなくなります。つまり、知的財産、契約情報、個人情報といった最高機密のデータを、クラウド上で安全に取り扱うための非常に強固なソリューションの一つと言えるでしょう。

これまでの課題:セキュリティ強化に伴う利便性のトレードオフ
これまでのCSEには、一つだけ課題がありました。それは、セキュリティを極限まで高めるために、一部の便利な機能が制限されていたことです。
特に、複数人でドキュメントを編集する際に頻繁に使われる「 コメント 」 や 「 提案 」といった機能は、CSEが有効化されたドキュメントでは利用できませんでした。そのため、機密文書のレビューを行う際は、別途チャットツールを使ったり、オフラインで修正点を伝えたりする必要があり、スムーズな共同作業の妨げになることがありました。
今回GWSのアップデート:暗号化とワークフローの高いレベルで両立

スムーズな共同作業ができなかった課題を解決するのが、今回のアップデートです。今回のアップデートのリリースは2025年6月4日から段階的に開始され、全てのユーザーに表示されるまで最大15日かかる見込みになります。
CSEで保護されたGoogleドキュメント上で、ついに 「提案」機能がフルサポート されました。なお、「コメント」機能については、現時点ではサポートされていませんが、今後の機能拡張が期待されます。
これにより、以下のようなシームレスな編集ワークフローが実現します。
- 機密情報を含むドラフトをCSEで暗号化して作成。
- 共同編集者が、内容を直接編集するのではなく「提案」モードで修正案を書き込む。
- 元の作成者は、その提案を一つひとつ確認し、「承認」または「拒否」を選択する。
この一連の作業が、 暗号化によってデータが完全に保護された状態 で行えるのです。セキュリティのために、もう使い慣れた便利なワークフローを諦める必要はありません。
参考リンク
Google Workspace Updates (2025年6月4日付)https://workspaceupdates.googleblog.com/2025/06/use-suggestions-in-client-side-encrypted-google-docs.html
想定される活用シーン
このアップデートにより、特に以下のようなシーンでのGoogle Workspaceの活用がさらに加速します。
- 法務・コンプライアンス: 契約書、法的文書、各種規定のレビュー
- 研究開発: 特許情報、研究データ、新製品の仕様書の共同執筆
- ビジネス・財務: M&A関連情報、未公開の財務データ、議事録の共有
- 人事・総務: 個人情報を含むデータの取り扱いや評価文書の作成
- 個人・フリーランス: クライアントとの契約書や機密情報のやり取り
まとめ:進化を続けるGoogle Workspaceで、未来の働き方を
今回のアップデート は、Google Workspaceが単なるツール提供者ではなく、生産性とセキュリティを両立させるためのパートナーとして、常に進化し続けていることの証左です。
セキュリティは、もはやビジネスの成長を妨げる「ブレーキ」ではありません。適切なツールと運用によって、むしろ競争力を高める「アクセル」となり得るでしょう。
大切な情報資産を守り、さらなる成功を加速させるために。
「Google Workspaceの安全性について、より詳しく知りたい」
「自分の環境でどのように活用できるか相談したい」
「Google Workspaceのライセンス体系や導入プロセスを知りたい」
このようなご要望がございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。 Google Workspaceの正規パートナーとして、あなたのビジネスや活動に最適なソリューションをご提案いたします。
ご相談はこちら:https://www.yoshidumi.co.jp/contact