AppSheetとは
2020年1月にGoogle のサービスの仲間入りをしたノーコード開発プラットフォームです。
普段使用しているGoogleスプレッドシートやExcelなどのデータを基に、マウス操作だけで直感的にアプリを開発できます。
「市民開発」というコンセプトを掲げており、プロのエンジニアだけでなく、業務を最も理解している現場の担当者自らが、必要なツールを迅速に開発することが可能です。
Geminiとは
Googleが開発した生成AI(人工知能)です。
人間のように自然な対話を通じて、質問に答えたり、文章を作成・要約したり、アイデアを出したり、さらには画像や音声、動画、コンピューターのコード(プログラム)まで理解し、生成することができます。
Geminiは「マルチモーダルAI」であり、テキストだけでなく、画像、音声、動画、コードといった複数の種類の情報を同時に理解し、処理できる能力を兼ね備えています。
AppSheetとGeminiのそれぞれの概要については以上となります。
続いて、AppSheetに組み込まれたGemini 「AI Task」について解説していきます。
AI Taskとは
「AI Task」は、AppSheetの自動化機能(Automation)の中に組み込まれた、Geminiのパワーを活用する新しい機能です。これにより、特別なAIの知識がなくても、業務アプリに高度な「知能」を実装できます。
具体的には、以下のような作業を自動化できます。
- 画像からの情報抽出
スマートフォンで撮影した請求書や領収書から、日付、金額、品目といった必要なデータだけを自動で読み取り、アプリのテーブルに保存します。
- PDFドキュメントの解析
取引先から送られてきたPDF形式の注文書や報告書の内容を解析し、重要な情報を抽出して次の業務プロセスに連携させます。
これまで人間が目視で確認し、手で入力していた作業を「AI Task」が行なってくれます。データの入力などの定型業務から私たちを解放し、より創造的で付加価値の高い仕事に集中する時間をもたらします。
活用事例
「AI Task」はさまざまなアプリでの活躍が期待できますが、今回は「書籍管理アプリ」の事例を紹介します。※アプリの開発工程は割愛します。
これまでのAppSheetアプリでは、ユーザーが手動で各列に値を入力する、選択肢から選ぶなどの操作を実行する必要がありましたが、今回の「AI Task」の機能を使うことによって画像を登録するだけで、Geminiが画像から情報を抽出し、各列に値を割り当ててくれるようになります。
操作方法
- フォームを開く
入力Formを開きます。
- 画像をセットする
追加したい画像を選択、または撮影します。
※モバイル・タブレットのみカメラが起動しその場で撮影が可能です。
- Saveを押す
保存します。


SAVEを押下したあとは、更新が終わるのを待つだけです。
更新が完了する時間はこれまでよりも長くなったと感じていますが、これはGeminiの機能を実行し画像から情報を抽出しているからでしょう。
blankとなり画像だけが入っている状態ですが、更新が完了したタイミングでそれぞれの列に自動で値が割り当てられます。


このほかにも請求管理アプリや名刺アプリなど、さまざまなアプリで「AI Task」を組み込むことが可能です。ぜひ試してみてください。
プレビューリリースからのアップデート
プレビューリリース中は一部の機能を試すことができましたが、一般提供開始に伴い、アップデートが入ります。
テキストからの情報抽出に対応
画像やPDFだけでなく、自由記述のテキスト(メール本文やメモなど)からも構造化された情報を抽出できるようになりました。
抽出データの柔軟な活用
AIが抽出した値を、直接テーブルに保存するか、あるいは保存せずに後続の自動化ステップで利用するかを選択できるようになり、より柔軟なワークフロー設計が可能です。
データ連携の強化
Ref型(他のテーブルを参照する列)を、AIによる分類や情報抽出の入出力としてサポートしました。
エラー処理の改善
万が一AIの処理でエラーが発生した場合のハンドリングが改善され、より安定した自動化の運用が実現します。
対象ライセンスと有効化
「AI Task」の機能は、AppSheet Enterprise Plusライセンスを保有するアプリ作成者に、デフォルトで提供されます。
管理者は、組織のルールに合わせて、AppSheet管理コンソールからガバナンスポリシーを定義し、AI機能の利用範囲を細かく制御できます。これにより、企業全体としてセキュリティとコンプライアンスを維持しながら、安全にAI活用を行えます。
「AI Task」の利用に必要なクレジット
「AI Task」の利用は、クレジットベースのシステムを採用しています。ここでは、その仕組みと管理方法について解説します。
クレジットの仕組み
AppSheet Enterprise Plusのご契約の一環として、組織にはAppSheetクレジットの割り当て量が自動的に付与されます。この機能を利用するために、別途Google Workspaceライセンスなどを契約する必要はありません。
ただしクレジットの割り当て量を増やしたい場合は、AppSheet Enterprise Plusライセンスを追加購入する必要があります。
割り当て量
組織はAppSheet Enterprise Plusライセンス1つあたり、月に1,000クレジットを受け取ります。
共有プール
このクレジットは組織の共有プールとして、メンバー全員で利用できます。
例)組織でAppSheet Enterprise Plusライセンスを10個保有している場合、毎月最大10,000クレジットが組織全体で利用可能になります。
ライセンスモデルによる違い
クレジットが利用可能になるタイミングは、ライセンスモデル(プール型か割り当て型か)によって異なります。
月の初めにクレジットの全割り当て量が組織で利用可能になります。
月の初めに割り当て済みライセンスのクレジットが組織で利用可能になります。割り当てられていないライセンスのクレジットは、ライセンスがユーザー アカウントに割り当てられると利用可能になります。
月次更新
クレジットの残高は毎月更新され、残ったクレジットは翌月に繰り越されません。
クレジットの消費量
クレジットは、デプロイ(本番運用)されたアプリとプロトタイプ(開発中)アプリの両方で、AIタスクが実行されるたびに消費されます。自動化(Automation)のテスト実行時にも消費の対象となります。
各AIタスクで消費されるクレジット数は以下の通りです。
AIタスクの種類
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消費されるクレジット数
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分類 (Categorize)
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10クレジット
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抽出 (Extract) - 画像、テキスト
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10クレジット
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抽出 (Extract) - PDF
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1ページあたり10クレジット
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クレジット使用状況の確認方法
AppSheet Admin consoleの「Gemini usage」ページから、クレジットの消費量とGeminiの利用状況をモニタリングできます。
具体的には、以下の情報をダッシュボードで確認可能です。
- 組織全体で消費されたクレジットの総数
- クレジットを最も多く使用しているアプリと、そのアクティブユーザーの詳細
- AIを活用しているアプリの所有者
- AIタスクの総実行回数と最終実行日
また、Audit HistoryやAutomation Monitorの監視ツールも、Geminiの利用状況の追跡に役立ちます。
まとめ
Geminiという強力な頭脳を得たAppSheetは、もはや単なる「業務アプリ作成ツール」ではありません。現場の課題を自ら理解し、解決策を実行する「賢い業務パートナー」へと進化を遂げていきます。
AppSheet Enterprise Plusをご利用の皆様は、ぜひ未来の仕事術をいち早くご体験ください。