ステップバイステップで実践:GeminiでIR資料をスライド化する
今回はデモとして、この架空のIRドキュメント(future_vision_ir_document_2025_q2.md)を元に、投資家向けの説明会スライドを作成していきます。

ステップ1:Geminiに「役割」と「目的」を明確に伝える
まずはGeminiアプリで、どのような立場で何をしてほしいのかを明確に指示します。
【プロンプト例】
| あなたは優秀なIRコンサルタントであり、プレゼン資料作成のプロフェッショナルです。以下のIRドキュメント(テキストまたはファイル)を読み込み、投資家向け決算説明会で使用するプレゼンテーションスライドを作成してください。 |

ステップ2:Geminiに「ヒアリング」させて、スライドの意図を明確にする
いきなりGeminiにスライドの構成案を作ってもらうのではなく、一度ワンクッション挟むことをおすすめします。
構成案の生成前に、Geminiからユーザーへ「質問」をさせる工程を挟みます。これにより、プレゼンテーションの核心(何を一番伝えたいか)が明確化され、Geminiと目的意識を共有した上で作業を進めることができます。
【プロンプト例】
| スライドの構成案を作成する前に、いくつか質問をしてください。このプレゼンで「最も重視すべき点」や「聴衆(投資家)が最も懸念している可能性のある点」を明確にするための質問を3〜4個お願いします。 |

ステップ3:ヒアリングの回答に基づき、「構成案(アジェンダ)」を作成させる
Geminiの質問に回答して、構成案を作成してもらいましょう。
ステップ2のGeminiの質問に答えることで、Geminiはあなたの意図を深く理解し「共通認識」が生まれます。単なる構成案ではなく、あなたの意図を汲み取った「最適な構成案」を引き出すための重要なステップといえるでしょう。
【プロンプト例】
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回答は以下の通りです。
1.(質問1への回答:例:今回は成長の「持続性」と「収益性の改善」を一番伝えたい) 2.(質問2への回答:例:競合他社との差別化と、R&D投資の費用対効果を懸念していると思う) 3.(質問3への回答:例:長期的な成長投資家) 4.(質問4への回答:例:EdTech部門のAIチューターの優位性を強調したい)
これらの回答を踏まえて、このドキュメント全体の内容を網羅するプレゼンテーションスライドの構成案(全10〜12枚程度)を作成してください。 各スライドの「タイトル」と、そこで説明すべき「主要なトピック(箇条書き)」をリストアップしてください。
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ステップ4:「グラフ」を自動生成させる
テキスト情報だけでは直感的に伝わりにくい「数字」は、Geminiを活用してグラフ化するのがおすすめです。情報を可視化することで、スライドの説得力が大幅に高まります。
ここで、グラフを挿入したいスライドを指定し、グラフを含めたスライドの生成を依頼してみましょう。
【プロンプト例】
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特に構成案の「Slide 3: 2025年Q2 連結業績概要」スライドにグラフを作成したいです。ドキュメントの「2.2. 業績ハイライト:売上高・営業利益の推移」の表データを使ってください。売上高と営業利益の推移が視覚的にわかる「棒グラフ」を作成してください。前年同期比(YoY)の成長率も明確に示してください。そして全部まとめて1つのHTMLスライドに生成してください。
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上記プロンプトを実行すると、Geminiは自動的にHTMLスライドとして出力しようとします。しかし、もし出力形式が「HTML (Canvas)」以外のが表示され、スライドが生成されない場合は、「HTMLスライド(Canvas)で生成してください」と再度指示を出すか、Canvasオプションを選択してから生成の指示を再実行してください。
【完成したスライド】
▼ 生成手順の紹介動画
【棒グラフスライド】

Geminiスライド作成の「質」を高める上級テクニック
1. デザインテーマ(CSS)を一括で指定する
デザインの不統一は、資料の信頼性を損なう要因となる可能性があります。企業のブランドイメージに合わせたデザイン指示を行い、アウトプットのクオリティを均質化させます。
【プロンプト例】
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全てのスライドに共通して適用できるデザインを提案してください。フォント色は、未来ビジョン株式会社のイメージカラーである「信頼感のある濃い青(#4f46e5)」を使用し、フォントは「プロフェッショナルで読みやすいサンセリフ体」を指定してください。
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2. 図表の「種類」を具体的に指定する
Geminiは、データに最適なグラフを提案してくれますが、ユーザー側で具体的にグラフの種類を指定することも可能です。強調したいポイントや用途に合わせて形式(円グラフ、折れ線グラフ等)を指示することで、より意図に沿った資料になるでしょう。
【プロンプト例】
| 「財務実績:売上と収益性の詳細 (億円)」では、構成比率が直感的にわかるように「ドーナツチャート」を使用してください。 |
重要:AIは「アシスタント」。最後は必ず「人間」がチェックする
Geminiによる自動生成は強力ですが、万能ではありません。生成されたものはあくまで「たたき台(ドラフト)」として扱い、最後は必ず人間の目でチェックを行う必要があります。
【厳守】チェックすべき4つのポイント
- 数字の正確性(ファクトチェック)
AIがグラフや表に転記した数値(売上高、利益率など)が、元のIRドキュメントと完全に一致しているか、1円単位、1%単位で確認してください。
- ニュアンスの正確性
「業績予想の据え置き理由」や、「リスク要因」など、繊細なニュアンス(言い回し)が、AIの要約によって変わっていないか、誤解を招く表現がないかを確認してください。
- 視覚的な調整(見やすさ)
AIが生成したレイアウトやフォントサイズが、実際のプレゼン環境(大きなスクリーンやWeb会議)で見やすいかを最終調整します。
- 権利関係のチェック(著作権/商標)
Geminiが生成した画像や図表、デザイン要素が、既存の著作物や企業の商標を意図せず侵害していないかを確認してください。
特に、外部のデータや第三者の画像をGeminiが参照・生成した可能性がある場合、その利用規約と著作権をクリアしているか確認が必要です。
まとめ:資料作成の時間を短縮し、戦略を練る時間に投資しよう
Geminiを活用することで、既存ドキュメントからのスライドの骨子作成などの単純作業は、従来かかっていた時間を大幅に短縮できる可能性があります。
AIに任せられる「作業」(コピー&ペースト、グラフ化、レイアウト)は徹底的に任せ、その分私たち人間は、
「このデータから誰に何を伝えるべきか?」
「相手が本当に懸念している点は何か?」
といった、より戦略的で創造的な仕事に時間を使うべきです。
まずは、手元にある企画書や報告書を、Geminiに読み込ませることから始めてみませんか?
今回ご紹介したような活用法を、セキュリティを担保した上で全社員が実践できれば、企業の生産性は大きく向上します。しかし、企業導入には「データ保護」「ガバナンス設計」「社内教育」といった壁が立ちはだかるのも事実です。
Google Cloud プレミアパートナーである吉積情報は、Geminiの導入支援から、安全な環境構築、定着化のトレーニングまでをワンストップでサポートします。
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