Workspace Intelligence (ワークスペース・インテリジェンス)の発表
今回のCloud NextのGoogle Workspaceパートは、Google Workspaceの製品担当副社長のユリー・クォン・キム氏がプレゼンを担当しました。

私たちは本質的な業務に集中することができていない
キム氏のプレゼンテーションは、私たちが直面する非効率な働き方に対する問題提起から始まりました。
「あなたは、たった一つの簡単な質問に答えようとしているのに、10分後には15個のタブが開いている。そして、古いメールを見てる間に、編集されているスライド資料に飛び移り、答えを見つけるためだけにスプレッドシートを掘り起こす」
「私たちは1日の半分を情報収集に費やし、残りの半分をそのデータをどう活用するか考えている」
流石に1日の半分も情報収集はしてないとは少しだけ思いましたが、非常にリアルな描写で実際にデータ収集が手間であることは事実であるため、引き込まれるプレゼンの導入だと感じました。
作業全体のコンテキストの断片化を解消する「Workspace Intelligence」
そして、この「情報収集」と「データ活用」の2つを同時に解決するというのが、今回発表された「Workspace Intelligence」です。

Workspace Intelligenceのデモンストレーション
デモンストレーションは、Googleチャットの画面から始まりました。つまり、「Workspace Intelligence」はUIを持つ新しいプロダクトではないということが、ここで理解できます。
デモンストレーションの設定に乗ると、キム氏は家具屋の地域代理店のマネージャーです。この代理店にとって、Googleチャットは、一箇所で共同の業務を行うための作業スペースです。また、このチャットスペースには、人間の同僚の他にも、Gemini Enterpriseで構築したエージェントが存在しています。

すると、ある日「新しいディスプレイキットが予定より早く到着する」という通知がチームに届きました。チームは混乱し、複数のチャットが炎上しています。

キムさんは、マネージャーとしてこの問題の収束に取り掛かります。チャットの左メニューにある「Ask Gemini」をクリックすると、Geminiが現在の問題を浮き彫りにします。具体的には、キムさんがローカライズする必要のあるプレゼンテーション資料に関するタスクです。この間、キムさんはタブを一つも開いていません。

キムさんは気づきました。「前四半期の地域別売上を示すチャートがあったはず…」通常であれば、Googleドライブを開いて、何十ものファイルから、欲しいファイルをピックアップする必要がありますが、キムさんはGeminiに直接、指示を送ります。
「前四半期の販売戦略、地域別売上チャートが載っている資料を見つけてください」

これは単なる指示ではありません。Geminiはキムさんの状況やファイルの内容を理解し、必要なファイルをピックアップしてくれました。本来であれば、多くの時間を費やすであろうファイルのピックアップがほんの数秒で完了しました。

ただ、これで作業が終わったわけではありません。地域別の計画を資料にまとめる必要があります。
「オーガニックライフのための計画を盛り込んだプレゼンテーション資料を作成してください」
このメッセージに、あらかじめ設定されていた「地域キャンペーンのスキル」のタグをつけることで、Workspace Intelligenceが機能し始めます。
※このスキルには、キャンペーン用のアウトプット資料に関するフォーマットが自然言語で定義されているのだと思われます。

キムさんのメールやチャット、その他ドキュメント参照するだけでなく、Hubspotのリアルタイムの勝敗データも取得し、資料の体裁を整えるために会社の企業ブランディングも参照し、新しいスライド資料が生成されました。もちろん、データの参照先を示してくれます。

資料を開いてみると、まさに企業のブランドイメージに沿った資料になっています。しかも、キムさんが過去に作成してきた資料の構成とも一貫しています。

結局Workspace Intelligenceとは何なのか?
初見では、これは何か新しいプロダクトなのかと思いましたが、どうやら違うようです。Workspace Intelligenceは、何か特定のUIがあるプロダクトではなく、Gemini Enterpriseも含めた統合された作業スペースを裏側で支えるエージェント全体を指すものであると私は解釈しました。
例として、Googleチャットのコミュニケーションを中心したデモンストレーションでしたが、特定の場所ではなく、あらゆる場面で、Workspace Intelligenceがユーザーのコンテキストを読み取り、支援してくれるというのがWorkspace Intelligenceの本質なのだと思いました。
生成AIによって、ここ数年、確かに私たちの業務効率は向上したと思います。ただ、何かアウトプットを生み出すためには、AIへのインプットに対して、情報収集したコンテキストをしっかり言語化する必要があり、この部分が大きな手間になっていました。
Workspace Intelligenceは、人間の作業の裏側にあるコンテキストを理解し、自然に人間の作業をサポートしてくれる新しいAIエージェントなのだと思います。
データ移行の5倍速を実現する「Rapid Enterprise Migration」

最後に発表されたのが、データ移行ツール「Rapid Enterprise Migration」です。キム氏によると、このツールを利用することで、Microsoft 365からGoogle Workspaceへのデータ移行が最大5倍高速化されるとのことです。どのようなデータ移行を基準に5倍高速になるかは明確ではないですが、「複雑な業務を行う法務・財務チーム含めた全体のデータ移行が5倍速になる」とのことだったので、複雑な要件にも対応できそうです。仮に1年かかるデータ移行が、最大で2.5ヶ月になることを考えると、非常に画期的な移行ツールです。また、例としてMicrosoft 365を出したことから、Googleの狙いは明確だと思います。
まとめ
去年のCloud Nextは、Google Workspace Studio(当時はFlows)をメインコンテンツに、Googleドキュメント内で文章を再構成できる「Help me refine」、Googleスプレッドシートのデータ分析を支援する「Help me analyze」、動画生成モデル「Veo 2」のVidsへの搭載など、プロダクトのアップデート中心の発表でした。
今回のNextの発表は、そもそもそういった機能すら意識せずに、AIエージェントが人間を助ける世界をGoogle Workspaceが目指しているというメッセージであると受け取りました。発表のボリュームでいうと、去年の方が多かったかもしれないですが、内容の洗練度では、去年を大きく上回るGoogle Workspaceへの期待を押し上げる発表であったと考えています。
もしかすると、今回発表された機能は、プレビュー時点では物足りなさを感じることもあるかもしれません。ただ、Googleが目指すAIエージェントを中心とした新しい人間の働き方のビジョンは、それ以上に期待できるものだと思いました。1年でこれだけのアップデートだったので、来年は一体どうなってしまうのでしょうか?今年は早起きして、日本で記事を書きましたが、来年は現地に行って、新しいトレンドを感じたいと心の底から感じました。