日本におけるAIの利用実態
Google Cloud導入企業のAI活用率は75%
最初に、日本企業におけるAI活用の現在地が具体的な数字とともに紹介されました。Google Cloudを導入している企業では、AIの活用率がすでに約75%に到達。さらに先行企業では、生成AIが単なる検証テーマではなく、実際の業務を支える仕組みとして本番運用へ移り始めています。

※Day1基調講演より
一方で、日本企業ではAIエージェントの導入が進んでいない
その一方で、日本企業全体を見ると、約70%がAIエージェントをまだ活用できていません。文章作成や要約などでAIを使う企業は増えていても、AIが業務の状況を判断し、社内データや複数のシステムと連携しながら仕事を進める段階には、多くの企業が到達していないことが分かります。
※Day1基調講演より
「シャドーAI」の問題についても言及がありました。AI利用者のうち49.8%、つまり約半数が、企業から正式に認められていないAIサービスを仕事で利用しているという結果も示されました。現場ではすでにAI利用が進んでいる一方、会社側のルールや利用環境の整備が追いついていない状況がうかがえます。

※Day1基調講演より
Gemini Enterpriseの具体事例
Gemini Enterpriseの日本企業における事例の紹介もありました。最初に、ファナック株式会社と株式会社日立製作所の事例がそれぞれ一枚のスライドで触れられましたが、今回はあくまで著名な企業がGemini Enterpriseの導入を初めていることを伝えたかったのだと思います。今後、具体的な導入事例として、Googleの公式HPやイベント等で発表される可能性もあると思いますので、楽しみに待とうと思います。
Google Cloud Japanと株式会社NTTデータの協業
Gemini Enterpriseを推進するための戦略的パートナーとして、株式会社NTTデータ(以下、NTTデータ)の西村忠興氏が登壇しました。これは既にニュース等で報じられてはいますが、Google Cloud JapanとNTT データは、企業のAI活用を本格化させるため、協業の拡大を発表しています。
両社が目指すのは、質問に答えるチャット型AIから、社内データや業務システムと連携し、自律的にタスクを進めるAIエージェントへの転換です。NTTデータはGemini Enterpriseを軸に、戦略策定から導入、定着、運用までを一貫して支援しています。さらに、世界で5,000人の専門人材を育成し、業界・業務別に最大500種類のAIエージェントを共同開発する計画をNTTデータは公式ページにて発表しています。自社でもGoogle WorkspaceとGemini Enterpriseを大規模に活用し、そこで得た運用やガバナンスの知見を顧客企業へ展開するそうです。

※Day1基調講演より
Gemini SparkがGemini Enterprise等で利用可能に
個人的にはこれが一番のサプライズでしたが、Gemini SparkがGemini EnterpriseとGoogle Workspace版のGemini appに組み込まれることが発表されました。Gemini Sparkは人間が実施する作業をエージェントに委任することができる機能で、これまで人間が行ってきた業務を、疲れを知らないエージェントが24時間365日、人間の代わりに動作します。

※Day1基調講演より
これにより、人間はより高付加価値の業務に集中することができます。Gemini Sparkはユーザーの操作履歴を学習し、ユーザー毎にパーソナライズされた経験を提供してくれます。また、Gemini Sparkは外部サービスのServiceNowと連携できるという説明もありましたが、連携サービスについては今後さらに増えていくことが予想されます。

※Day1基調講演より
ノーコードでエージェントが構築できるAgent Designer
Agent Designerは、専門的な知識がなくとも、直感的なUIとプロンプトの実装によって、エージェントが開発できる機能です。Agent Designerについては、今回初めて発表された機能ではなく、既に存在するGemini Enterpriseで使える機能の一つではありますが、プレゼンスライドをよくよく見てみると、「Human-in-the loopノード」が追加されていることに気付きました。これまでのAgent Designerでは、人間の判断をフローの中に差し込むことができなかったため、センシティブな実務で利用するには難しいと感じていたのですが、この機能が利用できるようになれば、エージェントの表現の幅が大きく広がります。

※Day1基調講演
Google Antigravity for Gemini Enterpriseのリリース
Google AntigravityがGemini Enterpriseに組み込まれ、企業向けの管理機能が強化されることが発表されました。これまで個人やチーム単位で利用されることが多かったAntigravityを、今後はGoogle Cloudの単一コンソールから一元管理できます。組織全体のトークン利用量を把握し、利用状況や権限を管理できるため、開発者ごとの利用実態が見えにくいという課題にも対応します。AIによる開発を広げながら、コスト管理やガバナンスも両立しやすくなる点は、企業導入を進めるうえで大きな変化になると思います。

※Day1基調講演より
Gemini Enterpriseが日本リージョンに対応
Google Cloud Next Tokyo ’26では、Gemini Enterpriseの日本リージョン対応が発表されました。これにより、国内企業はデータの保存場所や運用要件に配慮しながら、Gemini Enterpriseをより導入しやすくなります。特に、データレジデンシーや社内規程を重視する金融、製造、公共分野などでは、大きな後押しになりそうです。機能そのものの進化というより、企業が安心して本番利用へ進むための土台が整った発表と言えます。これまで検証にとどまっていた企業にとっても、日本リージョン対応は導入判断を進める材料になるかもしれません。

※Day1基調講演より
Gemini 3.5/3.6に関する近況
まもなくGemini 3.5 Proがリリースされる
エージェント駆動のコーディングに最適化された「Gemini 3.5 Pro」が、まもなく提供されることも明らかになりました。私は普段、開発でClaudeを使うことが多いため、実際にどこまで代替できるのかは気になるところです。個人的には、日常的なコーディング支援だけでなく、長時間のタスクや既存コードの理解でも、Claudeと並ぶ選択肢になるほどの性能を期待したいと思います。

※Day1基調講演より
Gemini 3.5 Flashが日本リージョンに対応
Gemini 3.5 Flashの日本リージョン対応も発表されました。高速な応答とコスト効率に強みを持つFlashモデルを、国内リージョンから利用できるようになることで、日本企業にとって導入のハードルはさらに下がりそうです。特に、データの保存場所や処理拠点を重視する企業にとっては、検証から本番利用へ進む後押しになります。問い合わせ対応や文書の要約、情報抽出など、日常業務で大量にAIを使う場面では、性能だけでなく応答速度や運用コストも重要です。日本リージョン対応によって、Gemini 3.5 Flashの企業利用が進むかもしません。

※Day1基調講演より
Google Workspaceに関する情報
ユーザーのコンテキストを読み取り動作するWorkspace Intelligence
今年ラスベガスで開催されたGoogle Cloud Next ’26同様、今回もWorkspace Intelligenceについての紹介がありました。この機能については、ラスベガスのNext速報記事で詳細を書いているため、コチラをご参考ください。

※Day1基調講演より
スプレッドシート上にアプリを構築できるSheet canvas
スプレッドシートの新機能「Sheets canvas」も紹介されました。Geminiへ指示するだけで、ダッシュボードや看板ボードなどの操作画面を、スプレッドシート上にアプリのような形で作成できます。驚いたのは、単にデータを見やすく表示するだけではない点です。作成した画面から情報を更新すると、元のセルにも変更が反映されます。これまでスプレッドシートを業務アプリ化するには、Apps Scriptなどでの開発が必要でした。それを会話だけで実現できる光景は、今回の発表の中でも特に衝撃的でした。スプレッドシートの使い方が根本から変わる可能性を感じます。Sheets canvasは2026年中にリリースされる予定とのことです。


※Day1基調講演より
Google Meetにリアル翻訳機能が搭載
Google Meetにリアルタイム音声翻訳機能が追加されることも発表されました。会議中の発言をその場で別の言語へ翻訳し、言葉の壁を越えて会話を進めやすくする機能です。これまで海外拠点との会議では、字幕を読みながら内容を追う場面も多くありましたが、音声で自然に理解できるようになれば、やり取りのテンポは大きく変わりそうです。グローバル企業だけでなく、海外パートナーや外国人社員との会議が多い企業にとって、日常的に使いやすい機能になりそうです。
※Day1基調講演より

※Day1基調講演より
まとめ
今回のGoogle Cloud Next Tokyo ’26を通して強く感じたのは、Googleが日本企業に対して、Gemini Enterpriseの導入を本格的に広げようとしていることです。これまでのイベントでは、モデルの性能や新機能の紹介が中心になることも多くありましたが、今回は実際の業務でどのように使われているのか、具体的な事例が数多く紹介されていました。
特に印象的だったのは、単なるチャット型AIの活用ではなく、社内データや業務システムと連携し、仕事を自律的に進めるAIエージェントの事例が増えていたことです。Googleとしても、Gemini Enterpriseを一部の先進企業だけが使う製品ではなく、日本企業の業務基盤として定着させたいのだと思います。
日本リージョンへの対応や管理機能の強化など、導入を後押しする環境も少しずつ整ってきました。今後は「生成AIを使うかどうか」ではなく、「どの業務に組み込み、どのように運用するか」が問われます。Day1は、Gemini Enterpriseが検証段階を抜け、日本企業で本格導入されるフェーズに入ったことを感じさせる基調講演でした。