Gemini At Workとは何か?
Gemini At Workは、Google Cloudが主催する、企業での生成AI活用をテーマにしたイベントです。Geminiをはじめとする製品の情報に加え、企業の導入事例や、AIを業務に組み込む方法が紹介されます。去年2025年10月の開催では、企業向けAI基盤のGemini Enterpriseが発表されました。社内データとの接続、ノーコードでのAIエージェント構築、エージェントの一元管理を備え、組織全体の業務自動化を支える仕組みです。さらに、AI学習プラットフォームのGoogle Skillsも発表されました。製品の進化と、それを使いこなす人材の育成という両面から、企業のAI活用を扱うイベントになっています。

Google CloudとAIプロダクトの実績
イベントの冒頭は、GoogleのCEOであるスンダー・ピチャイ氏が登場しました。ピチャイ氏の登場こそがこのイベントの重要性を示していると言えます。ピチャイ氏は最初にGoogle Cloudの実績について説明を行いました。
Google Cloudの顧客の約80%がGoogleのAI製品を利用しており、その中でも、約500社の顧客は各社1兆トークン以上を昨年消費したそうです。
ピチャイ氏は、このような成果が実現できたのは、Googleがフルスタックな統合プラットフォームとしてアプローチしてきたからだと説明しています。インフラからモデルやツール、AIを実装したプロダクトからセキュリティまで、AIにおけるあらゆるレイヤーをGoogleはカバーしています。

Geminiの新しい上位モデル「Gemini 4 Argon」の紹介
Gemini 4 Argonについては、数週間前から「近いうちにリリースされるのでは?」「競合他社を上回る性能になるのでは?」という推測がSNSでは溢れていました。その話題のArgonは、今回開催のGemini at Workで詳細が発表されました。

競合モデルと比較した場合のGemini Argonの優位性
提示された比較表では、Gemini 4 Argonは、知識業務、長文脈処理、画像・動画理解など、幅広い領域で競合モデルを上回っています。特に注目したいのは、知識業務の4指標すべてで首位となっている点です。AutomationBenchは51.3%で、次点のClaude Opus 5.5を8.8ポイント上回りました。金融分野のVals Finance Agent v2は65.4%、法律分野のHarvey’s Legal Agent Benchmarkは19.6%と、専門業務に関する評価でも優位性が示されています。
長文脈処理では、GraphWalksの256k〜1M条件で84.2%を記録し、次点のGPT-6 Astraに12.4ポイントの差をつけています。画像・動画理解でも、ChartographyとLVBenchの両方で最高値となりました。この結果からは、知識業務に加え、大量の情報や複数形式の情報を扱う能力の強さが読み取れます。
一方、FrontierSWE v2やTerminal-bench 4.0などでは競合が上回っています。Argonはすべての用途で最強と捉えるのではなく、業務に必要な能力に応じて選ぶことが重要になりそうです。

Googleが最初に強調したのは、金融・開発・法律・税務などの実務能力を総合評価するVals Indexの指標です。Gemini 4 ArgonはClaude Opus 5.5以上の性能があるとGoogleは主張しています。
既存ソフトウェアの複雑な修正・機能追加を評価するDeepSWE v1.1という指標では、77.9%というハイスコアを記録したそうです。これはGPT-6 Astraの74.1%、Claude Opus 5.5の74.2%を上回ります。

ArgonによってGoogle社内でも生産性が向上している
Google内部でも、性能の違いを実感しているそうです。例えば、過去4週間でArgon in Antigravityでエージェントが生み出したコードは35%増加し、品質も向上したことでコードのロールバックも35%減少したとのことです。

既に多くの企業でArgonは検証されている
Argonはナレッジワークやコーディングの能力だけでなく、サイバーセキュリティに関する知見が優れているということを強調していたのが印象的で、Argonについては既に多くの企業が自社環境でセキュリティ用途で検証を実施しているそうです。

Argon公開時期の発表はお預け
今回のGemini at Work ’26では、Argonの性能が紹介されましたが、具体的な公開時期の発表はありませんでした。私を含めて、実際に使える日を期待していた方にとっては、少しお預けとなった形です。
現在は、一部企業と限定されたテスターへの提供を進めながら、一般提供に向けて安全対策を強化しているそうです。発表された性能を、自分たちの業務で試せるのはいつになるのか。企業利用では、評価結果に加えて、実際の使い勝手も気になるところです。期待が高まったからこそ、次は公開時期のアナウンスを待ちたいと思います。
新たに発表されたGemini agentとは?
今回新たに「Gemini agent」が発表されました。発表スライドに「Your universal agent for work」と書いてある通り、「調査から資料作成、コード実行まで、幅広い業務を一つの窓口から任せられる汎用エージェント」という解釈で良いと思います。

指示ではなく目標を与える
Gemini agentは、目標に向けて作業を計画し、独自のスキルやツールを使い、業務システムと接続して成果物を作成するエージェントです。Google Workspaceとも連携し、Gmail、ドライブ、ドキュメント、スプレッドシート、チャット、カレンダー等のプロダクトの中で動作するようです。もちろん、ユーザー自身のコンテキストも理解した上で動作します。

文章作成からコード実装まで全て一つのインターフェースになる
ChatGPTやClaudeをご利用の方ならご存知だと思いますが、UI上ナレッジワークやコード実装についてはタブが別れていると思いますが、Geminiは「たった一つのエージェント」であるため、UIが統合されています。

Gemini agentはクラウド上で動作する
Gemini agentはクラウド上で動作するため、パソコンを閉じた後も、数時間から数日にわたる作業を継続することができるそうです。利用者が端末を開いたまま待つ必要がなく、再びアクセスした際に作業の続きや結果を確認できます。
また、端末や利用するアプリが変わっても、記憶や作業の文脈、利用者に合わせた情報が共通して維持されます。そのため、別の端末から利用するたびに、依頼の背景を説明し直す手間を減らせます。これにより、ユーザーは長時間かかる仕事をエージェントに任せ、その間に別の業務を進めることができます。
もちろん、Gemini agentはクラウド上で動作するため、アクセスできる端末は様々です。iOSやAndroidといったモバイルデバイスからWindowsやMacのようなデスクトップ端末まで、色々なデバイスからアクセスできます。
Geminiはマルチエージェントとして動作する
Geminiエージェントは、複数の工程を含む仕事に対し、必要に応じてサブエージェントを動的に作成します。それぞれが独自のIDを持ち、担当する作業を分担します。Geminiエージェントは各サブエージェントと連携し、同時に進める処理と順番に進める処理を調整するため、数時間から数日にわたる仕事にも対応します。
Geminiエージェントを支えるテクノロジー
企業の業務を担うGeminiエージェントの仕組みとして、ツール、スキル、コンテキストという3つの機能が紹介されました。価格体系や製品情報、部門ごとの慣習といった組織固有の知識を理解するために、これらの機能は連携します。今回は、発表された内容から、それぞれの役割を整理します。

スキルで業務の進め方を学ぶ
エージェントに対して、複数の工程を含む仕事の進め方を教えるための仕組みです。手順や知識、ワークフローを、再利用可能なプロンプトとして保存することができます。

あらかじめ用意されたスキルを利用するほか、チームや部門が独自のスキルを作成し、企業内の共有レジストリに公開できます。個人用のスキルも作成できるとのことでした。Geminiは、タスクに適したスキルとツールを選び、実行するたびに学習を重ねるそうです。これによって処理の一貫性を高めながら、トークンコストの削減にもつなげると説明されていました。
ツールで企業のシステムとつながる
ツールは、エージェントと業務で利用するシステムを接続するための機能です。接続先には、Google Workspace、Slack、Teamsなどのコラボレーションツールのほか、Salesforce、Jira、BigQueryなどが挙げられていました。デスクトップ上のファイルも扱えるそうです。
また、AIと外部ツールをつなぐ規格であるMCPにも対応し、社内外のMCPサーバーと連携できるとのことでした。企業向けのツールレジストリも用意され、チームが作成したツールを社内に公開できる仕組みになっています。既存のサービスとの接続に加えて、自社で作ったツールを共有できる点も紹介されていました。
コンテキストと4種類のメモリー
コンテキストは、利用者や組織の背景を理解するための機能です。質問や依頼された目標、一緒に働く人々について学び、その情報を回答の個別化や品質向上に活用します。

その基盤として、4種類の記憶が紹介されました。数日間続くタスクの状態を保持するセッション記憶、文書や対話から知識を蓄積する意味記憶、仕事の進め方を保持する手続き記憶、過去の実行内容を保持するエピソード記憶です。手続き記憶には、Gemini自身が作成するスキルも含まれるとのことでした。
Autoモードによって用途に応じてモデルが自動選択される
Geminiエージェントには新たにAutoモードが追加されます。ユーザーがGeminiを利用すると、エージェントはタスクを実行するのに適切なモデルを選択します。ユーザーはモデルを切り替えることなく、タスクに応じた結果を得ることができます。もちろん、エージェントはモデルが変わっても共通のツールやコンテキストを維持しています。

Googleの顧客に対する3つの約束
最後にGoogle CloudのCEOであるトーマス・クリアン氏は、顧客にGeminiを提供するに当たって3つの約束をすると宣言しました。
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3つの宣言
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内容
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①障壁を取り除く
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どこでも動作し、あらゆるタスクを実行し、お客様が選択したモデルをサポートし、エンタープライズレベルの制御を適用する、将来を見据えたプラットフォームを提供します。
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②複雑さを排除する
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Googleは、シリコン、モデル、スキル、ツール、セキュリティといったスタック全体を構築し、統合します。
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③構築された成果物は顧客のものである
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従業員やデータは移動させる必要がなく、独自の入力と出力は完全に顧客のものです。
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この3つの約束からは、企業がこれまで築いてきた業務環境や資産を活かしながら、AIの活用を広げていくという方針が読み取れます。
例えば、モデルを選べることは、業務に合った性能やコストを追求するうえで意味があります。発表では、モデルが変わっても、蓄積したコンテキストやスキル、データを維持できると説明されていました。新しいモデルが登場するたびに、業務の背景や手順を一から教え直さずに済むという考え方です。
また、半導体からモデル、ツール、セキュリティまでを一体として提供することは、企業がそれぞれを組み合わせる際の複雑さを減らすためのアプローチだそうです。その一方で、独自の入力や出力は顧客自身のものであり、人やデータを移す必要もないという約束も重要です。
私は、この組み合わせに企業向けプラットフォームとしての方向性を感じました。技術の進化を取り込みながら、自社の知識や仕事の進め方を継続して活かせること。今回の3つの約束は、Geminiを長く業務で使っていくための土台を示しているのだと思います。

まとめ
今回のGemini at Work ’26の発表から見えてきたのは、AIに任せられる仕事の範囲が、計画から実行へと広がっていく方向性です。目標を受け取り、作業を分担し、業務システムを使って成果物を作る。さらに、利用者や組織の背景を記憶しながら、継続して仕事に取り組む。これらが一つにつながることで、AIと働く姿は大きく変わっていくと感じました。
特に注目したいのは、企業が蓄積してきた知識や仕事の進め方を、スキルやコンテキストとして活用する仕組みです。モデルの性能向上に加えて、自社の業務を理解するための土台が整うことは、企業でのAI活用を考えるうえで大きな意味があります。日々使うツールや部門ごとの手順が、エージェントの仕事を支える資産になる可能性があるからです。
もちろん、どの仕事を任せ、どこで人が確認するのか、権限や費用をどう管理するのかは、実際の運用を通じて見極める必要があります。今回、こうした管理の仕組みも含めて紹介されたことからは、エージェントを企業の日常業務に組み込もうとする方向性が伝わってきました。
人が目標を考え、AIが実行を進め、その成果を見ながら次の判断をする。そんな働き方が広がれば、これまで準備や調整にかかっていた時間を、新しい企画や顧客との対話に振り向けられるかもしれません。今回の発表は、その未来を具体的に想像させるものでした。自分たちの知識と経験を持つエージェントと、どんな仕事ができるのか。今後の展開が楽しみです。