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何 芊慧

社会福祉法人に向けた、Google Workspaceで実現するDX推進と生成AI活用ガイド

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現在、日本の社会福祉法人を取り巻く環境は、少子高齢化や深刻な生産年齢人口の減少により、大きな転換期を迎えています。介護や福祉の現場における人材不足は、単なる一時的な問題ではなく、ケアの質の維持や事業継続そのものに関わる重要な課題となっています。

このような状況の中、従来の労働集約型の業務を見直し、デジタル技術を活用して業務効率を向上させる「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の推進は、すべての法人にとって欠かせない取り組みと言えます。本記事では、吉積情報の知見をもとに、社会福祉法人におけるDXの第一歩となるGoogle Workspaceの活用から、最新の生成AI(Gemini)の安全な実装方法までを詳しく解説いたします。

現場を楽にする「DX」の本当の目的とは

福祉業界でよく耳にする「ICT化」と「DX化」は、似て非なるものです。紙の記録をタブレット入力に変えるのがICT化だとすれば、DX化は「蓄積したデータをAIで分析し、状態変化を予測して支援計画を提案する」といった、業務プロセスそのものの抜本的な変革(BPR)を指します。

社会福祉法人におけるDXの真の目的は、職員を減らすことではありません。事務作業や情報共有にかかる負担を大幅に減らし、そこで生まれた「時間」を利用者様との対話や、より高度なケアに充てることです。実際にDXを推進した法人では、経営ダッシュボード作成、職員育成システム開発などにより、働きやすさが向上し、「職員の定着率向上」など、経営基盤の強化につながることも期待できます。DXは単なるコスト削減ではなく、法人の魅力向上に繋がる戦略的な投資なのです。

デジタル基盤としてのGoogle Workspace for Nonprofits

日々の業務課題(特定職員への情報依存、紙の回覧によるタイムロス、対面会議のための移動時間など)を解決する第一歩として、クラウドツールの導入は非常に有効です。中でも、非営利団体向けに提供されている「Google Workspace for Nonprofits」は、初期費用を抑えつつ高度なセキュリティ環境を構築できるため、多くの福祉現場で選ばれています。

Google for Nonprofits 成功事例:https://www.google.com/intl/ja/nonprofits/success-stories/

非営利団体向けプログラムの適用要件と審査

Googleは社会課題に取り組む組織を支援するため、本プログラムを通じてGoogle Workspaceを無償または特別割引で提供しています。日本国内では、NPO法人や公益法人のほか「社会福祉法人」も明確に対象として認められています(※病院や学校法人は対象外となるため、主たる事業が社会福祉事業である証明が必要です)。

登録には、パートナー機関(TechSoup Japan等)を通じた厳格な審査(通常3〜5営業日)があり、法的に正当な組織・代表者であることが確認されます。

エディションの比較と選び方

要件に応じてGoogle Workspaceは複数のプランが用意されています。※2026年5月15日時点の情報です。

プラン名 料金
ユーザー/月
ストレージ仕様 Meet(ビデオ会議)機能 主な管理・セキュリティ機能
Nonprofits ¥0 (無償) 100TB(全体共有) 最大150人(最長24時間) 独自ドメイン, 2段階認証, 基本エンドポイント管理
Business Standard ¥400※1 2TB/人(プール化) 最大150人(録画機能あり) 無償版機能 + 共有ドライブの高度なアクセス制御※2 + Cloud Search 等
Business Plus ¥700※1 5TB/人(プール化) 最大500人(出欠確認) Standard機能 + Vault (データ保持・電子情報開示) 等
Enterprise Standard・Enterprise Plus お問い合わせ 上限なし(要件に応じる) 最大1000人(ノイズキャンセル等) Plus機能 + データ損失防止 (DLP) 等

無償のNonprofitsプランの最大の魅力は、組織全体で100TBという大容量の「プールストレージ」を共有できる点です。動画を多く扱う職員とテキスト記録のみの職員の間で容量の偏りがあっても、無駄なく全体で容量をシェアできます。

※1 該当価格はGoogleが提供する非営利団体向け割引価格です。
※2 高度なアクセス制御とは、機密データの漏洩を防ぐために、共有ドライブごとに管理者が細かく設定できるセキュリティ権限のことです。NonprofitsとBusiness Standard以上の機能の比較は、以下リンクよりご覧いただけます:

Google Workspace の非営利団体向け特典

https://www.google.com/intl/ja/nonprofits/workspace/compare/

非営利団体向けの Google Workspace の機能を比較する

https://knowledge.workspace.google.com/admin/billing/compare-google-workspace-features-for-nonprofits?hl=ja

無償プランで十分なケースと有償への切り替えの目安

独自ドメイン(@法人名.or.jp)でのメール運用や、基本的なファイル共有・チャット連絡の定着が目的であれば、無償プランで十分に効果を発揮します。

一方で、以下のようなご要望がある場合は「Business Standard」以上へのアップグレードが必要です。

  • 会議の録画をしたい:夜勤職員への共有や、法定研修のオンデマンド配信を行う場合。
  • 強固なアクセス制御が必要:要配慮個人情報を含むファイルを共有ドライブで扱う際、「ダウンロード・印刷・コピーを禁止する」といった細やかな設定を行いたい場合。
  • コンプライアンスをより強固にしたい:退職者のデータ保持や内部監査(eDiscovery)に備える場合は「Business Plus(Vault機能)」が推奨されます。

【吉積情報での導入支援・サポートについて】

なお、吉積情報株式会社では、誠に恐れ入りますが、無償の「Nonprofits」プランに対する導入支援や運用サポートはご提供しておりません。弊社のサポート対象は「Business Starter」以上の有償プランとなります。 もし「Business Standard」などの標準エディションを活用したセキュアな環境構築や、本格的なDX推進・伴走型の継続的なサポートをご検討の法人様がいらっしゃいましたら、ぜひ吉積情報にお任せください。

無料の個人向けGoogleアカウント(シャドーIT)の危険性

「個人の無料Gmailアカウントではダメなのか?」という疑問をよくいただきますが、これはリスクがあります。退職者が利用者様の情報を持ったまま離脱するリスクを防げませんし、昨今の巧妙なサイバー攻撃(なりすまし等)に対しても、独自ドメインを持たないフリーメールは社会的信用とセキュリティの観点から推奨できません。一元管理できる組織アカウントの導入が必須です。

【吉積情報導入支援事例】
「10X」の思想で福祉現場から変革を:社会福祉法人ことの海会 様

ここで、業界特有の課題を乗り越え、Google Workspaceを用いて大幅な業務改善を推進している社会福祉法人ことの海会様(長崎県大村市・諫早市)の実例をご紹介します。

導入前の課題:「データ管理の限界」と「分断されたコミュニケーション」

同法人では以前、オンプレミスのファイルサーバーとLINE WORKS等の複数ツールを運用していました。しかし、約20年分のデータが整理されずに蓄積された結果、必要な情報が見つからず、誤削除のトラブルも起きていました。また、ICTに苦手意識のある職員への配慮から「グループアドレス」のみでメール運用をした結果、かえって情報が「自分事」として捉えられず、共有漏れが発生するという悪循環に陥っていました。

決断:「後戻りしない」一括導入とハイブリッドなライセンス選定

同法人はGoogleが掲げる「10X(今ある前提にとらわれず、10倍の成果を目指す)」というカルチャーに強く共感し、DXを本格始動しました。段階的な導入ではなく、退路を断って一気に切り替える「全ライセンス一括導入」を決断。吉積情報の支援サービス「My Start」を活用し、メリハリのあるライセンス構成を採用しました。

● 管理者・リーダークラス
複雑な管理と高度なアクセス制限に対応するため「Business Standard」を導入。

● 現場の支援スタッフ
ファイル閲覧がメインとなるため、機能を絞ることで操作負荷とセキュリティリスクを軽減できる「Frontline Starter」を選択。

導入後の成果:情報のシームレス化と「AI」への期待

段階的なトレーニングを通じて、ICTに不慣れな職員へも着実にツールが定着しました。

● 業務のスピードアップ
Gmailで受けた内容をそのままGoogle Chatへ転送するなど、アプリ間のシームレスな連携により情報共有が加速しました。

● 会議の自動化
Google Meetの活用により、スケジュールの発行から会議後の議事録・要約・ToDoの作成までが自動化され、準備工数が大幅に削減されています。

● 未来に向けたAI・ノーコード活用
生成AIGeminiやNotebookLM)に触れたことで現場の意識が変化。今ではAIを活用した「シフト作成アプリ」の自動化や、職員同士が感謝を送り合うAppSheetアプリ「ことハピ」の開発など、現場発信のダイナミックな業務改善が進んでいます。

事例の詳細は以下よりご覧いただけます。

Google Workspace 全ライセンス一括導入でDXを本格始動。「10X」の思想を胸に、福祉の現場から“ダイナミックな業務改善”を目指す

医療情報システムの安全管理ガイドラインへの対応

社会福祉法人がシステムを導入する際、厚労省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(第6.0版)」への準拠が求められます。対象が介護事業者にも拡大されており、利用者様の既往歴や家庭環境といった「要配慮個人情報」をクラウドで適切に守る必要があります。

重要なコンセプトは「ゼロトラストアーキテクチャ(どのアクセスも暗黙的に信用せず毎回検証する)」です。具体的には以下の対策が求められます。

  1. 認証基盤の強化: パスワードだけでなく「二要素認証(多要素認証:MFA)」の設定。Google Workspaceでは管理画面から全職員に強制適用が可能です。
  2. アカウントの厳格な管理: 対面での本人確認によるID発行、退職時の速やかなアカウント凍結。
  3. BCP(事業継続計画)の策定: ランサムウェア攻撃等に備え、システム停止時の紙媒体での代替運用や復旧手順を定めておくこと。

介護現場における生成AI(Gemini)の活用と生産性向上

安全な基盤が整った後の次なるステップが、生成AIの活用です。Google Workspaceに統合できる「Gemini」は、普段のドキュメントやGmailから直接呼び出せるため現場にも馴染みやすいのが特徴です。

【介護現場における生成AIの戦略的意義とガイドライン】

  • ケアの質向上(予測的アプローチ):AIが過去の膨大なケース記録から、利用者様のわずかな状態変化の兆候(睡眠パターンの乱れや食事量の低下など)を横断的に抽出し、ケアプランの最適化に向けた示唆を提供することで、事後対応ではなく予防的な介入が可能になる。
  • 職員の心理的負担とデスクワークの軽減:複雑な文章の作成、日報の要約、行政向け報告書のドラフト作成といった、認知的なリソースを大きく消費する業務をAIに委譲することで、職員の精神的なストレスが緩和される。
  • 属人化の解消とスキルの平準化:特定の熟練職員のみが有していた暗黙知や、質の高い記録のフォーマットを、AIを用いて標準化されたテンプレートに変換することで、経験の浅い新人職員を含めた組織全体のスキルレベルの底上げが図られる。

【介護現場のGeminiの具体的な活用ユースケース】

  • 介護記録の要約と申し送り:膨大な日々の記録を読み込ませ、「夜勤者への申し送り事項をリスク管理の観点から3点で要約して」と指示するだけで、伝達漏れを防ぎ、時間を大幅に短縮します。
  • 個別支援計画の素案作成:個人情報を伏せたアセスメント情報を入力し、「自立支援の観点から短期目標と支援内容の素案を5つ出して」と指示します。「白紙から考える負担」がなくなり、専門職は推敲に専念できます。
  • マニュアルや広報物の作成:新人向けの感染症対応マニュアルの箇条書き化や、家族向けニュースレターの文案作成など、事務部門の生産性も飛躍的に高まります。

生成AI導入における3つのルール(ガバナンス)

Geminiは強力ですが、組織での運用には厳格なルールが必要です。

  1. 要配慮個人情報を直接入力しない:利用者様の実名や詳細な住所・病歴は、必ず「A氏」などにマスキングしてから入力してください。
  2. 出力内容は必ず人間(専門職)が確認する:AIはもっともらしい嘘(ハルシネーション)をつくことがあります。出力はあくまで「下書き」であり、最終確認と責任は常に人間が持ちます。
  3. 医療・介護の専門的判断をAIに委ねない:「何の病気か」「どう処置すべきか」といった重大な判断はAIに依存せず、専門職が行うという境界線を厳格に守ってください。

「個人向けの無料版を使えばコストがかからないのでは?」と考えるのは重大なリスクが潜んでいます。組織で安全かつ適切に生成AIを活用するためには、Google Workspace with Geminiのような法人向けサービスの利用が推奨されます。詳細はこちら:Gemini の無料版と有料版、どっちを選ぶ?個人利用からビジネス活用まで徹底ガイド

こうした厳格なガバナンスルールを現場に定着させつつ、実際に日々の業務を効率化していくためには、専門的なノウハウが不可欠です。吉積情報では、AI活用支援サービス「AI Driven」を通じて、安全な環境下でのGeminiの具体的な活用方法から、現場スタッフへの定着化までを伴走支援いたします。ルールを遵守しながら、専門職が本来のケア業務に集中できる環境づくりをお手伝いします。

補助金制度の戦略的活用と中長期的な財務計画

DX推進には初期投資が伴いますが、国や自治体の「介護ロボット・ICT導入支援事業」などの補助金を活用することで負担を大きく軽減できます。

例えば千葉県や柏市などの事例を見ても、対象経費の4分の3が補助されるなど手厚い支援が行われています。最近の傾向として、単一の機器だけでなく、介護ソフトやGoogle Workspace等の連携ツールを合わせた「パッケージ型導入」や、研修への参加が要件となるなど、本質的な業務改善を後押しする制度設計になっています。

令和7年度千葉県介護テクノロジー定着支援事業費補助金(令和7年12月更新):https://www.pref.chiba.lg.jp/koufuku/kaigorobot/kaigorobotjyouhou.html

注意点として、クラウドサービスは月額・年額の継続課金(ランニングコスト)が発生します。導入によって削減される残業代や印刷費、採用コストの抑制などの「投資利益率(ROI)」を事前にシミュレーションし、補助金終了後も持続可能な予算計画を立てることが重要です。

※吉積情報ではIT補助金のお手続き代行は行なっておりません。お客様ご自身で申請が必要です。

変革を成功させるための組織づくり

ツールを入れても「人」と「組織」が変わらなければDXは定着しません。トップダウンで突然押し付けるのではなく、まずは以下のようなステップを踏むことが成功の鍵です。

  • スモールスタート:現場の課題を話し合う「革新会議」を設け、まずはITに前向きな職員を中心に、特定の業務(日報のデジタル化など)から小さな成功体験を積みます。
  • 継続的改善と心理的安全性:DX定着には通常1年半ほどかかります。定期的にPDCAを回しつつ、経営層は「AIに仕事を奪われるわけではない。目的は負担軽減とケアの質の向上である」というメッセージを発信し続け、現場の不安を取り除くことが大切です。

おわりに

社会福祉法人におけるDXとは、単なる新しいITツールの導入ではなく、将来にわたって質の高い福祉サービスを提供し続けるための「次なるステージに向けた組織の構造改革」です。

Google Workspaceを用いた安全な情報基盤の構築と、Geminiによる業務の標準化。そして、専門職の知見と温かな人間性を組み合わせることで、本来行うべき「本質的なケア業務」に時間を使えるようになります。

吉積情報では、Google Workspaceの導入支援から、現場での生成AI活用、各種セキュリティガイドラインへの準拠を見据えた組織ごとの最適なDXロードマップの策定まで、社会福祉法人の皆様に寄り添った伴走型サポートを提供しております。

「無料プランで少し限界を感じている」「有償プランで本格的にAIを活用してみたい」「自法人に最適なプランを知りたい」といったご相談がございましたら、ぜひお気軽に吉積情報までお問い合わせください。現場の課題解決に向けて、専門スタッフが丁寧にご案内いたします。

※ご注意:吉積情報における導入支援・サポート対象プランについて

吉積情報株式会社では、無償の「Nonprofits」プランに対する導入支援や運用サポートはご提供しておりません。弊社のサポート対象は「Business Starter」以上の有償プランとなります。本格的なDX推進やセキュリティ強化、伴走型の継続的なサポートをご希望の法人様は、Business Starter以上のプランでのご検討をおすすめいたします。

何 芊慧
何 芊慧
吉積情報株式会社 マーケティング部
文系出身ながら、テクノロジーの可能性に魅了されIT業界へ飛び込み、入社1年目で「Associate Google Workspace Administrator」「Generative AI Leader」を含む計6つのGoogle Cloud認定資格を取得。
非エンジニアという枠を超え、AIを活用した新しい挑戦を全力で楽しんでいます!
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